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古代史探訪 enkieden.exblog.jp

神社、遺跡めぐり   1943年生   印南神吉 (いんなみかんき)


by enki-eden
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盟酒(うけいざけ・父親を占いで探す)

 播磨国風土記(写本・国宝・天理図書館蔵)の託賀郡(多可郡)の条に、天目一箇神(あめのまひとつのかみ)が登場します。荒田村の女神、道主日女命(みちぬしひめのみこと)が子を産んだが、誰が父親なのか分からないので、父親の可能性のある神(豪族)を集め酒をふるまった。諸神の中の誰に盟酒(うけいざけ)を注(つ)ぐかを子に選ばせたところ、子は天目一箇神に注いだ。従って天目一箇神が父親であることが分かった。

 山城国風土記逸文にも賀茂別雷大神(賀茂氏の祖神・上賀茂神社祭神)の父が分からないので酒を注がせる話があります。子が酒を天に捧げようとして屋根瓦を破り天に昇ったので、父親は雷神であることが分かった。父は乙訓神社(おとくにじんじゃ・長岡京市の角宮神社・すみのみやじんじゃ)の火雷神(ほのいかづちのかみ)であった。

 素戔嗚と天照大神の誓約(うけい・占い)によって8人の子が生まれますが、このときは媒体が酒ではなく、剣と勾玉でした。

 出雲国風土記では、佐太大神(猿田彦)が生まれたのは加賀の潜戸(くけど・島根県松江市)という海の洞窟の中で、母親は神魂命の娘の蚶貝比売(きさかいひめ)です。蚶貝比売は妹の宇武加比売と一緒に、死んだ大国主命を生き返らせたことがあります。
 蚶貝比売はお産のために潜戸に入っていき「なんと暗い岩屋なのだ」と言って、金の弓矢を射ると加加(かか)と明るくなったので加賀の潜戸というようになった。佐田大神が生まれ出ようとした時、弓矢が無くなってしまった。そこで蚶貝比売は、「私の産む子が麻須良神の子であるならば、なくなった弓矢よ出てこい。」と祈ると、角の弓矢が流れてきた。しかし、生まれた子(佐太大神)は、「これは私の弓矢ではない。」と言って捨ててしまった。すると今度は金の弓矢が流れてきたので、佐太大神はこれを持って、「なんと暗い岩屋であろう」と言って、岩壁を突き破って矢を射通してしまったので大きな穴が開いて明るくなった。
 蚶貝比売はお産の時、父親は誰だろう、麻須良神だろうか、それとも…と思案していたのでしょう。占いの結果、なくなった金の弓矢が出てきたので、父親は麻須良神と決まりました。




 少彦名神は古事記では神産巣日神(かみむすひのかみ)の子、日本書紀では高皇産霊尊(たかみむすひのみこと)の子となっている。体の小さい神で、大国主神と協力して国造りを行い、途中で常世国に帰ってしまった。少彦名神は高皇産霊の子ではあるが「高皇産霊の手の間から零(こぼ)れ落ちた」と言われているので、これも占いで父親に決めつけられたのでしょうか。

 このように、古代では父親が分からない子がたくさんいたと思われます。現代では非嫡出子となります。神といわれるような偉い豪族は全国の美人の所に足しげく出向いていったのです。英雄色を好むということもあったでしょうが、豪族の資金源は農作物の税や手工業品製造販売、それから交易による利益でした。交易のために全国の市(いち)に出かけたり、同盟を結ぶために地の有力豪族の娘と結婚しました。
 娘が結婚するのは一人の豪族だけではありません。何人もの豪族が来るのです。このようなわけで、大国主命などは全国で100人以上(181人)の子がいました。素戔嗚や大国主は偉大な神として祀られていますが、こういう事情もあって全国で祀られているのではないでしょうか。全国に親類縁者や子孫、家臣、関係者が大変多いのです。
 子を生んだ母親にとっては誰が父親かは重大問題です。必死になって父親を探したに違いありません。そんな中で、最終的には盟酒や占いなどで判断しようとしたのでしょう。うっかり酒を注いでもらうと父親にされてしまいますので注意が必要ですね! 多分酔っ払っているでしょうし・・
 今のように「DNA鑑定」があれば占いは必要なかったのになと思います。昔の方がおおらかで良かったのかもしれませんがねぇ…
 さて、初詣に行って今年の運勢でも占ってみましょうか・・
   大和神社(おおやまとじんじゃ)祭神:日本大国魂大神、
            住所:奈良県天理市新泉町星山306
            2007年8月19日撮影
盟酒(うけいざけ・父親を占いで探す)_d0287413_921642.jpg

印南神吉   メールはこちらへ  nigihayahi7000@yahoo.co.jp



by enki-eden | 2013-01-02 09:31