2013年 01月 30日
大祓い(おおはらい)
お祓いは大和の国で行われていた民間のまじないです。どこかの家で何か悪い事があったと聞きつけると「拝み屋」が現れ、お祓いをして穢れを取り除きましょうとやって来ます。
これはボランティアではなく商売ですから、お祓いが終わると何がしかの代償を支払います。お祓いを断ってもいいのですが、そうすると拝み屋は「穢れを放っておくと大変な事になりますよ!」と脅しますから、断りにくいのです。多くの人は、お祓いが早く終わって帰ってくれないかと我慢していたのでしょう。
中大兄皇子(後の38代天智天皇、626年~671年)と中臣鎌足(614年~669年)が645年から646年にかけて大化の改新を進め、お祓いは禁止されました。
40代天武天皇(631年?~686年)の時に国家神道が確立され、伊勢神宮の天照大神を頂点として日本の隅々にまで神社を系統付けました。また母の37代斉明天皇(594年~661年)の影響なのか、道教に関心を示しました。そのような情勢の中で、禁止されていたお祓いが祓除(はらえ)として国家行事にまで昇華していきました。
42代文武天皇(683年~707年)の時、701年に大宝律令が完成しました。勿論、藤原不比等(659年~720年)が制定の中心人物だったと思います。6月と12月の晦日に朱雀門前の広場に皇子・大臣・官僚などが集まり、中臣氏が取り仕切る中臣神道として大祓えが始まりました。6月の大祓えを夏越の祓(なごしのはらえ)、12月の大祓えを年越の祓(としこしのはらえ)といいます。この呼び方は明治政府によって一時禁止されていました。宮中では今でも行事が残っているようです。
平城宮跡の朱雀門を大極殿から望む。手前をちょうど近鉄電車が走っています。
日本中の地方の国々の罪・穢れを取り除くための国家行事・神事ですから、罪を許していただいた代償を各地方国が中央国家に支払う事になります。これは中央国家にとっては6月と12月の臨時収入となり、宮廷内の人々のボーナスにもなります。その仕組みが現代でも続いており、官庁・企業で年2回のボーナスが支給されています。
禊祓(みそぎはらえ)を詠んだ歌は多いですが、その一部を見ましょう。
小倉百人一首 98番藤原家隆(1158年~1237年)
風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける
「ならの小川」は、京都市北区の上賀茂神社の境内を流れている御手洗川
(みたらしがわ)です。「なら」は神社の森の楢の木です。
「みそぎ」は「6月の祓え」のことで、川の水などで身を清め、穢れを落とします。
拾遺和歌集 134番 藤原長能(ふじわらのながよし、949年~1009年)
さばへなす 荒ぶる神も おしなべて 今日は名越の 祓なりけり
拾遺和歌集 292番 よみびとしらず
水無月の 名越しの祓へ する人は 千歳の命 延ぶといふなり
後撰和歌集 215番 よみびとしらず
加茂川の みなそこすみて 照月を ゆきて見んとや 夏ばらへする
私の家は神道ですので子どもの頃から祝詞(のりと)を聞き慣れています。祝詞の最後の部分を書き写しました。
大祓詞(おおはらえのことば)最後の部分
遺(のこ)る罪は在(あ)らじと 祓へ給ひ清め給ふ事を 高山の末 短山(ひきやま)の末
より 佐久那太理に落ち多岐つ 速川(はやかわ)の瀬に坐(ま)す瀬織津比売
(せおりつひめ)と言ふ 神 大海原に持ち出でなむ
此く持ち出で往(い)なば 荒潮の潮の八百道(やおじ)の八潮道(やしおじ)の
潮の八百会(やおあい)に坐す速開都比売(はやあきつひめ)と言ふ神
持ち加加呑みてむ
此く加加呑みてば 気吹戸(いぶきど)に坐(ま)す気吹戸主(いぶきどぬし)と言ふ神
根国底国(ねのくにそこのくに)に気吹き放ちてむ
此く気吹き放ちてば 根国底国に坐す速佐須良比売(はやさすらひめ)と言ふ神
持ち佐須良(さすら)ひ失ひてむ
此く佐須良ひ失ひてば 罪と言ふ罪は在らじと 祓へ給ひ清め給ふ事を
天つ神 国つ神 八百萬神等(やおよろずのかみたち)共に 聞こし食(め)せと白(もう)す
罪・穢れを祓う祓戸大神(はらえどおおかみ)
瀬織津比売(川で禊をした穢れを海に流す)
速開都比売(川から海へ流れてきた穢れを渦潮に巻き込ませる)
気吹戸主(この世とあの世の境にいる息吹戸主が根国底国に穢れを吹き飛ばす)
速佐須良比売(根の国底の国で穢れを消し去る)
神社の境内に祓戸大神を祀っていることがあります。
往馬大社の祓戸社・瀬織津比売神
女神の千木は水平切りで、鰹木は偶数ですが、ここの千木は垂直切りで、鰹木は三つで
男神の形になっています。例外はたくさんあります。
夏越の祓では多くの神社で「茅の輪潜り(ちのわくぐり)」が行われます。
また神社では、人形(ひとがた)に氏名・生年月日・年令などを記入して、お祓いをして
もらい、我が身の罪穢れを託す方法もあります。
このほか、吉田神道を中心として、役の行者(えんのぎょうじゃ)などの山岳密教と関係のある
六根清浄(ろっこんしょうじょう)の大祓」もあります。
これはボランティアではなく商売ですから、お祓いが終わると何がしかの代償を支払います。お祓いを断ってもいいのですが、そうすると拝み屋は「穢れを放っておくと大変な事になりますよ!」と脅しますから、断りにくいのです。多くの人は、お祓いが早く終わって帰ってくれないかと我慢していたのでしょう。
中大兄皇子(後の38代天智天皇、626年~671年)と中臣鎌足(614年~669年)が645年から646年にかけて大化の改新を進め、お祓いは禁止されました。
40代天武天皇(631年?~686年)の時に国家神道が確立され、伊勢神宮の天照大神を頂点として日本の隅々にまで神社を系統付けました。また母の37代斉明天皇(594年~661年)の影響なのか、道教に関心を示しました。そのような情勢の中で、禁止されていたお祓いが祓除(はらえ)として国家行事にまで昇華していきました。
42代文武天皇(683年~707年)の時、701年に大宝律令が完成しました。勿論、藤原不比等(659年~720年)が制定の中心人物だったと思います。6月と12月の晦日に朱雀門前の広場に皇子・大臣・官僚などが集まり、中臣氏が取り仕切る中臣神道として大祓えが始まりました。6月の大祓えを夏越の祓(なごしのはらえ)、12月の大祓えを年越の祓(としこしのはらえ)といいます。この呼び方は明治政府によって一時禁止されていました。宮中では今でも行事が残っているようです。
平城宮跡の朱雀門を大極殿から望む。手前をちょうど近鉄電車が走っています。
日本中の地方の国々の罪・穢れを取り除くための国家行事・神事ですから、罪を許していただいた代償を各地方国が中央国家に支払う事になります。これは中央国家にとっては6月と12月の臨時収入となり、宮廷内の人々のボーナスにもなります。その仕組みが現代でも続いており、官庁・企業で年2回のボーナスが支給されています。
禊祓(みそぎはらえ)を詠んだ歌は多いですが、その一部を見ましょう。
小倉百人一首 98番藤原家隆(1158年~1237年)
風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける
「ならの小川」は、京都市北区の上賀茂神社の境内を流れている御手洗川
(みたらしがわ)です。「なら」は神社の森の楢の木です。
「みそぎ」は「6月の祓え」のことで、川の水などで身を清め、穢れを落とします。
拾遺和歌集 134番 藤原長能(ふじわらのながよし、949年~1009年)
さばへなす 荒ぶる神も おしなべて 今日は名越の 祓なりけり
拾遺和歌集 292番 よみびとしらず
水無月の 名越しの祓へ する人は 千歳の命 延ぶといふなり
後撰和歌集 215番 よみびとしらず
加茂川の みなそこすみて 照月を ゆきて見んとや 夏ばらへする
私の家は神道ですので子どもの頃から祝詞(のりと)を聞き慣れています。祝詞の最後の部分を書き写しました。
大祓詞(おおはらえのことば)最後の部分
遺(のこ)る罪は在(あ)らじと 祓へ給ひ清め給ふ事を 高山の末 短山(ひきやま)の末
より 佐久那太理に落ち多岐つ 速川(はやかわ)の瀬に坐(ま)す瀬織津比売
(せおりつひめ)と言ふ 神 大海原に持ち出でなむ
此く持ち出で往(い)なば 荒潮の潮の八百道(やおじ)の八潮道(やしおじ)の
潮の八百会(やおあい)に坐す速開都比売(はやあきつひめ)と言ふ神
持ち加加呑みてむ
此く加加呑みてば 気吹戸(いぶきど)に坐(ま)す気吹戸主(いぶきどぬし)と言ふ神
根国底国(ねのくにそこのくに)に気吹き放ちてむ
此く気吹き放ちてば 根国底国に坐す速佐須良比売(はやさすらひめ)と言ふ神
持ち佐須良(さすら)ひ失ひてむ
此く佐須良ひ失ひてば 罪と言ふ罪は在らじと 祓へ給ひ清め給ふ事を
天つ神 国つ神 八百萬神等(やおよろずのかみたち)共に 聞こし食(め)せと白(もう)す
罪・穢れを祓う祓戸大神(はらえどおおかみ)
瀬織津比売(川で禊をした穢れを海に流す)
速開都比売(川から海へ流れてきた穢れを渦潮に巻き込ませる)
気吹戸主(この世とあの世の境にいる息吹戸主が根国底国に穢れを吹き飛ばす)
速佐須良比売(根の国底の国で穢れを消し去る)
神社の境内に祓戸大神を祀っていることがあります。
往馬大社の祓戸社・瀬織津比売神
女神の千木は水平切りで、鰹木は偶数ですが、ここの千木は垂直切りで、鰹木は三つで
男神の形になっています。例外はたくさんあります。
夏越の祓では多くの神社で「茅の輪潜り(ちのわくぐり)」が行われます。
また神社では、人形(ひとがた)に氏名・生年月日・年令などを記入して、お祓いをして
もらい、我が身の罪穢れを託す方法もあります。
このほか、吉田神道を中心として、役の行者(えんのぎょうじゃ)などの山岳密教と関係のある
六根清浄(ろっこんしょうじょう)の大祓」もあります。
by enki-eden
| 2013-01-30 11:40