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古代史探訪 enkieden.exblog.jp

神社、遺跡めぐり   1943年生   印南神吉 (いんなみかんき)


by enki-eden
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「古墳出現期の東海系遺物展」と「出雲大社展」

 奈良県立橿原考古学研究所付属博物館において、「東海地方からの新しい風」(2月1日~3月16日)と「高く大きい出雲大社」(2月8日~3月23日)の特別展が開催されています。
   「東海地方からの新しい風」パンフレット(S字甕)
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 展示品の写真撮影はできませんが、私が特に注目したのはS字甕と有孔銅鏃です。
 S字甕はS字状口縁台付甕(えすじじょうこうえんだいつきかめ)の略称で、伊勢湾沿岸部を中心に2世紀から5世紀・6世紀にかけて造られた台付きの甕です。横から見るとS字状の形をしており、海部氏、尾張氏の関わる土器です。材質は三重県の雲出川(くもづがわ)の土を使用しており、近辺には前方後方墳があります。
 三重県は一般的には近畿地方に入っていますが、東部は東海地方との結びつきが強くなっています。近畿と東海の境目で、672年の壬申の乱では伊賀、伊勢の豪族が重要な役割を果たしました。


 上のパンフレットでも確認できると思いますが、S字甕には独特の刷毛目(ハケメ)模様があります。ハケメは杉などの薄い板の木口(こぐち、切断面)を利用して、木目の柔らかい部分が磨り減って凹凸ができて櫛のようになるので、土器の表面を撫でると平行線の模様ができます。この方法は古墳時代の東海地方から大和への伝来で、円筒埴輪の表面を整える際にもハケメはよく使われます。
 纏向遺跡から出土する外来系土器で一番出土数の多いのが東海系です。尾張氏は大和葛城高尾張から東海の尾張へ移住してからも大和・皇室と密接に繋がっていました。
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     纏向遺跡の航空写真パネル
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有孔銅鏃(穴のあいた銅鏃、単孔銅鏃と多孔銅鏃がある)
 有孔銅鏃は東海地方の起源で、2世紀中頃から3世紀前半に周辺地域に広がりました。大和では10代崇神天皇の頃です。
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 上のパンフレット写真のように、奈良県からは宇陀郡の調子遺跡と五條市の住川墳墓群から出土しています。

 有孔銅鏃は24遺跡から約30点ほどが出土しています。愛知県内では9遺跡において発見されており、その分布状況から濃尾平野が中心のようです。また、有孔銅鏃の原形が東海地域に広く分布する五角形石鏃を基にデザインされたものと考えられています。
 滋賀県では4遺跡から出土、長野県では3遺跡、岐阜県では2遺跡、三重県でも2遺跡、和歌山県・静岡県・神奈川県からも出土しています。
 そして古墳時代初頭(3世紀後半)に東海土器が他地域に拡散するのに合わせて、共に有孔銅鏃が拡散分布することが多いのです。

 博物館の職員に何故鏃に穴を開けるのですかと聞きますと、儀式用ですという返事でした。しかし、中国でも有孔鉄鏃は出土しますが、実戦用らしいです。穴が開いていると、鏑矢ほどではないでしょうが矢の飛ぶ音が大きくなって相手を威嚇できるのでしょうかねぇ。実際に飛ばしてみないと分かりませんね。
 穴の数や開け方により部族の特徴を表しているという見方もできるでしょうか。

高く大きい「出雲大社」展パンフレット
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    遷宮後の出雲大社本殿(パンフレットより)
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 江戸時代の本殿勝男木(鰹木)、現物の大きさにびっくりしました。(パンフレットより)
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   本殿上段平面図と心御柱横の畳(パンフレットより)
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 特別展は写真撮影できませんが、常設展やロビーでは撮影できるものもあります。
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     流水施設
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     石槽
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     飛鳥京苑池跡(赤丸部分)
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        発掘調査の写真パネル
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 箸墓古墳の東にあるホケノ山古墳を利用して、古墳時代後期に横穴式石室が造られた。石室内から出土の家形石棺。
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 心と体の安定を維持するには、セロトニンが大事なようです。セロトニンを増やすには、朝日を浴びて、散歩をして、青魚を食べるといいそうです。誰でも簡単にできることですね。
 神道の基本は「朝日を拝む」ことから始まります。古代の巫女が鏡を朝日に向けて一日の儀式が始まるのも、結果的にセロトニンを増やすことになっていたんですねぇ。

 紫外線を受けすぎるといけませんが、適度な日光浴は良い効果があるようですよ。体中をベールで覆って日光を受けにくいアラブの女性はヴィタミンDが不足して、免疫力が低下し、糖尿病、癌、骨粗しょう症が多いそうです。
 ヴィタミンDが不足すると、うつ病や花粉症にもかかるリスクが増えるといわれています。日光を避けすぎてもいけませんね。

by enki-eden | 2014-03-01 00:08