神話を軽んじてはいけない
旧約聖書はユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖典であるが、ユダヤ人の歴史書でもあると私は考えています。
古代人の表現方法は現代人とは違う。古代人には現代人のような科学的知識がなかったので、現代人から見るとあり得ない表現が出てくる。
旧約聖書に記された王や預言者の寿命は異常に長い。「ノアの方舟(はこぶね)」で有名なノアは、4,300年程前に生きた。ノアの祖父メトセラ(メトシェラ)は969年生きたと創世記に記されており、長寿の代名詞になっている。
アメリカのカリフォルニア州高地に生える木がメトシェラと名付けられている。樹齢が4、800年もあるので長寿のメトシェラに因んで名付けられた。
969年も生きることは不可能だと考えられるので、この年令は事実ではないが、これが古代人の表現方法である。「誰よりも遙かに長生きしましたよ」と云うサインだ。
当時使われていた60進法で推定すると、実際には969才の12分の1(81才)ぐらいでしょうか。或いは、969は暗号で、96才9ヶ月のことだったかもしれない。
メトシェラの孫のノアは500才になってセム、ハム、ヤペテを生んだと記されている。これも12分の1の42才の時かもしれない。
このような記述方法があっても、旧約聖書をよく読むと年代がある程度分かってくる。私見ですが、ユダヤ人とアラブ人の祖・アブラハムは4,000年程前、モーゼは3,300年程前、ダビデ王は3,000年程前に生きた。その子孫のイエスキリストは2,024年程前に生誕した。
また旧約聖書の出エジプト記では、モーゼがイスラエルの民を率いてエジプトを脱出した。紅海で行く手を阻まれたが、モーゼが杖を挙げると海水が左右に分かれ、通ることができた。エジプト軍が追跡してきたがモーゼが杖を挙げると海水が元に戻り、エジプト軍は溺死した。
この記述を考古学的に、科学的に検証したアメリカの学者によると、この場所は紅海ではなく、ナイル川デルタ(三角州)近くの潟湖であったという。東から強い風が吹くと、ラグーンの水面が波立ち、海水が4時間ぐらい西へと追いやられた。
イギリス軍の記録にも、現地の強風でラグーンの水が完全に無くなったと云う記録が残っている。同様の現象は、アメリカの五大湖のひとつエリー湖などでも観測されている。エリー湖の平均水深は18mと浅い。
私見ですが、出エジプト記にある海水の干満は、引き潮・満ち潮現象ではないかと考えています。日本でも海彦山彦神話に満潮と干潮を操ることができる「潮満玉(しおみつたま)」と「潮乾玉(しおひるたま、しおふるたま)」の話があり、神功皇后伝説にも登場します。
神武天皇記の最初の記述に、「天孫が降臨されてから、179万2470余年になる。」とあるが、これは誰が見ても事実ではない。
この記述は古代人の表現方法であって、「天孫(天照大神=卑弥呼)が降臨されたのは、179年から247年までである」と云うことになる。
いつから数えて179年から247年なのかというと、皇室の創始者である初代奴国王の国常立尊(くにのとこたちのみこと)が生誕してから179年後に卑弥呼(天照大神)が生まれ、247年後に亡くなったと云うことになる。
卑弥呼(天照大神)は西暦247年に亡くなった。従って卑弥呼(天照大神)は西暦179年に生まれた。国常立尊の生誕は偶然にも西暦元年ということになる。
記紀の成立は8世紀の初めである。663年の白村江の戦いで、日本は4万人以上の軍隊を派遣したが、4~5倍の軍勢を出した唐と新羅の連合軍に大敗し、1万人が戦死した。
記紀の成立はその50年から60年後になるので、新羅に対する憎しみが極端に大きな時代であった。従って、昔の新羅との縁があると考えられていた素戔嗚尊(140年頃-200年頃)のイメージは非常に悪かったので、素戔嗚尊は大悪人として描写された。
製鉄族の素戔嗚一族は博多湾に注ぐ多々良川や支流の久原川・猪野川上流でたたら製鉄を営んでいた。多々良川はたたら製鉄、猪野川は鉄(いな、いの、いね)に因んだ川の名だと考えられる。
上流でたたら製鉄を営むと、川が汚れ、土砂が流されてきて川底が上がり洪水の可能性が増える。天照大神が中流域・下流域で機織りをしていると、大雨で洪水になり、家屋や畑が流されてしまった。
その状況を記紀の描写では、「素戔嗚尊が春には天照大神の田の畔を壊し、秋には馬を放して田を荒らした。そして新嘗祭(にいなめさい)では部屋に糞をした。また、天照大神が機織り中には馬の皮を剥いで屋根から投げ入れた。」などと記す。
この中で、「糞をした」とあるのは、実際にそんなことをしたのではなく、たたら製鉄により出てくるカスを「金糞(かなくそ)」と云うので、金糞が出たことの比喩だと考えられる。
素戔嗚尊は大悪人として描かれたが、52代嵯峨天皇(786年-842年)は810年に「素戔嗚命は即ち皇国の本主なり」と述べ、素戔嗚尊の名誉復活を宣言した。記紀の成立から100年も経たずに素戔嗚尊は復活したのである。
この様に、神話は古代人の表現方法や比喩で語られているので、言葉通りに受け取らず、背景を読む必要があるが、古代人が歴史を伝えようとして記した神話を軽んじてはいけない。
神話には古代のマレビトの行動や考え方がふんだんに詰まっているので、現代の我々にも大いに参考になると思います。
自分の今の状況は、神話の中のどの話と似ているのか考えて、共通点があればそれを参考にすると思わぬヒントが出てきます。何しろ古代の倭国を動かしていたマレビト達ですからね。
現代の大物政治家や専門家よりも優れているかもしれませんよ。外国の神話も大いに役立つはずだし、旧約聖書もすごい。
イギリスの歴史学者アーノルド ジョゼフ トインビー(1889年-1975年)は、「滅亡する民族の3つの共通点」を示した。
自国の歴史を忘れた民族は滅びる。
全ての価値をお金に置き換え、心の価値を失った民族は滅びる。
理想を失った民族は滅びる。
トインビーは戦前に1度、戦後に2度にわたって来日している。1967年には昭和天皇の前で講義もしている。トインビーの叔父は同じ名前の経済学者アーノルド トインビー(1852年-1883年)である。
私は日本の古代史を復元して、社会の役に立てないだろうかと模索しています。神社を参拝して神とつながり、古代史を学び、神話を自分の生き方に生かしましょう!
印南神吉 メールはこちらへ nigihayahi7000@yahoo.co.jp

